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2020-11-18

江戸の雰囲気

僕が義足になる少し前、2018年の夏だったと思う。朝、東京駅の地下道を京橋に向かって歩いていた。向こうから、もうかなりの歳だと思われるご老体がゆっくりと歩いてくる。すれ違いざま、そのご老体が明るい声で「お久しぶりです」と声をかけてきた。その人にまったく心当たりはない。思わず「はい?」と声を出してしまう。

「鈴木です、電気屋の」と言って、ご老体が人差し指で自分の鼻先を指した。TV ドラマで見る、そのままの動きだ。僕が「お間違えだと思いますよ」と言うと、そんな筈は、という様子で「うーん。...そうですか?」と言う。その表情がとても悲しそうだった。

「でも、声を掛けてくださって有難うございます。お気を付けて」と言ってご老体と別れた。そのご老体の発する言葉が、まるで時代劇で見る江戸っ子のような調子で、何だかとても楽しい気分になった。暫くの間、その気分を味わっていた。

あれが "江戸言葉" とか "東京方言" と呼ばれるものだろうか? ほんの短い会話だったが、実に貴重な体験だった。